特許発行費用を納付した後に、簡易に情報開示できるクイックパス情報開示陳述書(QPIDS:Quick Path Information Disclosure Statement)パイロットプログラムが試行されています。

QPIDSプログラムの試行は、2012年5月16日に開始され、何度かの終了期限の更新を経て、2015年9月30日まで試行される予定です(2014/9/24発表)。

米国特許法では、IDS(情報開示陳述書)の提出義務が、特許発行まで出願人に課されています。日本の会社が米国に特許出願する場合、米国のみならず、日本を含め複数国に同じ内容の発明について出願を行うことが普通です。一方、審査は各国毎に行われるため、拒絶理由通知がいつ出されるかわかりません。

従って、米国出願において特許発行費用を払った後、例えば、日本の審査で今までに見たことのない先行技術が引用され、この先行技術を情報開示する必要に迫られる場合には、特許発行を取下げる手続とともに、継続審査(RCE)又は継続出願の手続が必要となります。

従って、RCE等の審査において、提出された先行技術が特許性に影響しないものと分かった場合でも、RCE等の手続費用は無駄になります。が、QPIDSプログラムを利用すると、上記費用及び時間を節約できます。

QPIDSプログラムの申請時期:

イラスト中の赤色で示す期間〔IF支払日の翌日から特許発行日の前日まで(約1ヶ月間)〕です。

QPIDS説明

QPIDSプログラムの申請に必要な書類:

(1)QPID申請書

(2)IDS、先行技術を知ってから3ヶ月以内である陳述、IDS費用(CFR 1.17(p)

(3)特許発行取下げ書、特許発行取下げ費用(CFR 1.17(h)

(4)RCE、RCE費用(CFR 1.17(e)

QPIDSプログラムが申請されると、審査官は、IDSの先行技術により審査を再開する必要があるか否かを検討します。審査官がIDSで提出された先行技術について審査が必要でないと決定した場合には、許可可能通知(Notice of Allowability)が改めて発行され特許発行となります。すでに支払ったRCE費用は、自動的に返還されますが、特許発行取下げ費用は返還されません。なお、許可通知(Notice of Allowance and Fee due)は改めて発行されることはありません。

一方、IDSにより提出された先行技術により審査を再開する必要があると審査官が判断すると、特許発行が取り下げられRCEにおいて特許性について審査されます。審査が再開される際には、出願人へIDSを検討するための審査再開通知(Notification of Reopening of Prosecution due to Consideration of an Information Disclosure Statement filed after mailing of a Notice of Allowance)が発送されます。なお、すでに支払ったIDS費用は、自動的に返還されます。

なお、上記イラストでは、拒絶理由通知で引用された先行技術は、特許発行費用支払い後に発見した例を示していますが、特許発行費用支払い前に知っていた先行技術をQPIDSプログラムで提出することも可能です。がQPIDSプログラムを申請する日から遡り、3ヶ月以内である必要があります。また、QPIDSプログラムの申請時に補正書を提出した場合には、RCEとして処理されます。従って、補正書は出せません。

参照:

QPIDS Pilot Program

FAQ-QPIDS