特許審査ハイウェイ制度(外国特許を早く取るために)のその1に記載した通り、特許庁のホームページには、特許審査ハイウェイ(PPH)のメリットとして、以下の事項が挙げられています。

(1)審査期間を短縮化できます。

(2)審査におけるアクション(拒絶理由通知)の回数を削減でき、現地代理人費用を抑えることができます。

(3)特許査定率が向上できます。

さらに、上記メリットと併せて、PPH申請に関する統計がPatent Prosecution Highway Statisticsに公表されていますので、後半に転載しました。

パリ優先権を主張した外国出願において、PPHを申請すると、(1)審査期間の短縮、(2)アクション(拒絶理由通知)の発行回数の削減、及び(3)特許査定率の向上、が可能であることが、グラフ(A)~(E)に示されています。

ただ、パリ優先権を主張した米国出願についてPPHを申請した場合、(2)アクション(拒絶理由通知)の発行回数の削減とは、いかないようです(以下のグラフ(C)参照。)。

さらに、下記のグラフ(D)に示されるように、米国出願の特許査定率は、全出願については53%ですが、PPH審査では、87.9%です。ただ、このグラフ(D)は、特許査定率について、最初に出願及び審査がなされた第1の国がどこであるかについて、峻別していません。従って、日本の審査で許可可能の請求項(クレーム)があると判断された場合には、約90%の確率で特許になる、とまでは言えないようです。

少し古いデータですが、日本で特許になった出願について、米国出願でPPH申請を行った場合の特許査定率は、95%(2009年7月時点)となっています(特許審査ハイウエイの概要:7ページ)。従って、日本で特許可能とされた出願に基づき、PPH申請を行う米国特許出願は許可される可能性が非常に高いと言えそうです。

一方、米国出願の審査において、発行されるアクション(拒絶理由通知)の回数は、PPH申請の有無に拘わらず大差ありません(以下のグラフ(C)参照。)。よって、上記(2)のメリットは余りないようです。

それでは、以下に、パリ優先権を主張した諸外国に特許出願を行いPPH申請を行ったケースに関するグラフ(A)~(D)を示します。

(A)PPH申請から最初のアクション(拒絶理由通知)が発行されるまでの平均期間

例えば、米国(US)において、最初のアクションが発行されるまでの期間に関し全特許出願の平均は、18ヶ月ですが、PPH申請がなされた出願は、4.4ヶ月です。PPHgraph2 (B)PPH申請から最終処分がなされるまでの平均期間

例えば、米国(US)において、最終処分がなされるまでの期間に関する全特許出願の平均は、29ヶ月ですが、PPH申請がなされた出願については、14ヶ月で最終処分がなされています。

PPHgraph3

(C)発行されるアクション(拒絶理由通知)の平均回数

例えば、米国(US)の審査における全特許出願のアクションの回数は、平均2.4回ですが、PPH申請がなされた特許出願は、平均2.3回です。

 

PPHgraph4

(D)特許査定率

例えば、米国(US)の審査における全特許出願の特許査定率は、53%ですが、PPH申請がなされた特許出願の特許査定率は、87.9%です。

PPHgraph1

上記(A)~(D)のグラフの注釈:

  • *1 調査期間:2013年1月~12月
  • *2 調査期間:2014年3月
  • *3 調査期間:12年4月~2013年3月
  • *4 調査期間:2013年7月~2013年12月
  • *5調査期間:2006年7月~2011年12月での総数

特許審査ハイウェイ制度(外国特許を早く取るために)その3