平成26(2014)年特許法等改正〔審査請求期間徒過の救済措置の施行日は未定。2015(平成27)年4月1日施行に向け庁内作業は進んでいるようです。〕により、3年の出願審査請求期間内に審査請求をできなくても、出願人に災害等のやむを得ない事由があった場合、1年以内であれば、審査請求をできるようになります(特48条の3⑤)。出願人への救済制度です。
(特48条の3⑤)「前項の規定により取り下げられたものとみなされた特許出願の出願人は、第1項に規定する期間内にその特許出願について出願審査の請求をすることができなかつたことについて正当な理由があるときは、その理由がなくなつた日から2月以内で同項に規定する期間の経過後1年以内に限り、出願審査の請求をすることができる。」
一方、救済措置により第3者が困ることがあります。出願日から3年間間、出願審査請求がなされなかったので、その出願の発明は自由に実施できる、と考えて実施を開始したところ、その後出願審査請求がなされ、特許が発生する場合です。
上記した出願人への救済措置と一緒に、第3者を保護する規定も導入されます。具体的には、救済措置により審査を受け、特許権が発生しても、その特許発明を善意に実施している第3者は、通常実施権を有し、そのまま実施を継続できます(特48条の3⑧)。
(特48条の3⑧)「第5項(前項において準用する場合を含む。以下この項において同じ。)の規定により特許出願について出願審査の請求をした場合において、その特許出願について特許権の設定の登録があつたときは、その特許出願が第4項(前項において準用する場合を含む。)の規定により取り下げられたものとみなされた旨が掲載された特許公報の発行後その特許出願について第5項の規定による出願審査の請求があつた旨が掲載された特許公報の発行前に善意に日本国内において当該発明の実施である事業をしている者又はその事業の準備をしている者は、その実施又は準備をしている発明及び事業の目的の範囲内において、その特許権について通常実施権を有する。」
上記通常実施権を発生させるためには、第3者が下図の期間(赤色の括弧)内に実施を開始していることが一の要件となります。
また、上記特48条の3⑧中に規定される特許公報は、紙媒体でのみ発行されます。従って、「みなし取下げ」及び「出願審査請求」の有無及び発行日を確認するには、特許庁の2階にある工業所有権情報・研修館へ行く必要があります(次善策としてIPDLで確認)。
審査請求の未請求によりみなし取下げされた特許出願が掲載される特許公報は、「特許庁公報」の「拒絶査定、出願放棄・取下・却下リスト(特許)」です。
みなし取下げされた特許出願の願番は、以下の通り、「出願審査請求期間経過による出願取下リスト(特許)」に列挙されています。
一方、救済措置により審査請求を行われた特許出願が掲載される特許公報は、「特許庁公報」の「公示号」です。
現在の「公示号」の目次は、以下の通りです。
一旦みなし取下げされた出願について、出願審査請求が行われた事実は、上記目次の「特許法第193条の規定による公報掲載」の1項目として加えられる予定です。具体的な項目名(出願審査請求?)は未定です。
なお、上記特許公報「拒絶査定、出願放棄・取下・却下リスト(特許)」及び「公示号」の発行予定は、特許庁HPの「I.特許庁公報発行予定表(紙)」の特許庁公報(紙)発行予定表で確認できます。